実験装置
上野研究室では以下のような実験装置が利用可能です。見出しがリンクになっているものはクリックすると写真が出ます。
実験装置は新規導入・改造・更新・廃棄が多々あり,既に無いものも下記の中にはあります。
原子層堆積(ALD)装置 †
手元にあった使っていない真空チャンバーを流用し,見よう見まねで作ったALD装置です。今のところはトリメチルアルミニウムと水を原料に用いたアルミナ成膜が可能です。近々ハフニウム前駆体も取り付ける予定です。用途は電界効果トランジスタのゲート誘電膜形成と,太陽電池の封止・反射防止膜形成,です。
成膜対象の基板が小さく,「ウエハー全面に均一成膜」なんてことは考えていないので,とりあえず基板と水晶振動子膜厚計に原料が安定して供給されればいい,という考えで製作しました。真空チャンバーは大きすぎるので,暇とお金があったらもっと小さいものに変更したいです。バルブ制御の電気系とソフトウェアはほぼ自作,ソフトは例によってExcelVBAで書いています。秋葉原の秋月電子で売っているRS232CデジタルIOモジュールとソリッドステートリレーを使うと,この手の制御が簡単にできます。なおどちらも在庫限りです・・・。
現在,別のALD装置も計画中で,カルコゲナイド系層状物質の成膜を予定しています。前駆体をどうするか思案中です。
マスクレスフォトリソグラフィー装置 †
2014年度に作製した,マスクが不要なフォトリソグラフィー用パターン露光装置です。金属顕微鏡とLED光源DLPプロジェクタを組み合わせることで,解像度1μmの任意のパターンをレジストを塗布した基板上に投影し,露光を行うものです。薄膜FETやホール効果測定試料の電極形成に用いています。
装置の仕組みは簡単で,接眼観察とカメラ撮影が同時に可能な金属顕微鏡を用意し,そのカメラ接続ポートにDLPプロジェクタの投影像を適当なレンズを介して導入することで,対物レンズ下の試料表面にパターンを投影する,というものです。接眼レンズの片方を外してCMOSカメラを取り付け,試料や投影パターンをPCに取り込んでいます。
さまざまな大きさ,形状の層状物質単結晶薄片上に大気中で電極を形成することができるため,1μm程度の解像度で十分であれば,電子線リソグラフィーよりも遙かに安価かつ簡便です。高価な電極パターンマスクを作製する必要もありません。作製費用はPCやソフト(PowerPointです)も入れておよそ7〜80万円です。
フォトレジストにはAZ5214Eというものを用いていますが,紫外光で無くても,青色LEDの波長で十分に感光します。赤色光には感光しませんから,3原色LEDプロジェクタであれば青色光カットのロングパスフィルターも不要で,赤色で電極パターンを描画してから青色に切り替えれば,そのまま露光できます。
キセノンや高圧水銀ランプ+カラーホイールを用いたDLPプロジェクタだとロングパスフィルター必須ですし,明るすぎ・熱すぎ・冷却ファンの振動・短寿命,という問題もあります。またカラーホイールの回転とCMOSカメラのフレームレートが上手く同期しないと撮影画面に横縞が入ってしまい,非常に見づらくなります。
顕微鏡会社からの完成システムの販売にも協力しておりまして,先日第1号機がつくばのとある研究室に納品されました。詳細はこちらのページをご覧下さい。
超高真空MBE・表面電子分光複合装置 †
この装置では,層状化合物半導体薄膜等のMBE成長とin-situでの表面電子分光を行うことができます。構成は,
- MBE室(ターボ分子ポンプ付,最高到達真空度1×10-8 Pa)1台
- 電子分光室(ターボ分子ポンプ付,最高到達真空度1×10-8 Pa)1台
- 試料導入室(ターボ分子ポンプ付き,最高到達真空度1×10-6 Pa)2台
- クヌッセンセル(Kセル)2本
- ロードロック式Kセル 3本
- 反射高速電子線回折装置(MCP-RHEEDスクリーン付) 1式
- 電子銃内蔵共軸円筒鏡型ダブルバス電子分光装置(CMA) 1式
- 傍熱/通電両対応試料加熱装置 2式
などが付属しています。
電子分光はCMA内蔵の電子銃を用いたオージェ電子分光と,電子エネルギー損失分光が測定可能です。以前は紫外光電子分光装置も所有していましたが,博士過程修了して助教になった石川君にグローブボックスと一緒に引き取ってもらいました。測定電源系は,私が卒業研究以来ずっと使っているものです。元は指導教官だった小間篤先生が筑波大学に在籍されていた際に設計し,学生の皆様が製作した物です。中身の部品はあれこれ新しくしていますが高圧電源なんかは元のままです。制御PCはずっとPC-9801でしたが,2014年初夏のとある日,「いい加減にしろ」との声に目覚めてWindows+ExcelVBAによる制御系に変更しました。やれば10日で完成するものです・・・。
・・・なお2018年度,電子分光装置は後輩に全て譲り,代わりにX線光電子分光装置を東大から移管・接続しました。斉木先生ありがとうございました。
原子間力顕微鏡装置 †
この装置はセイコーインスツルメンツ社製の原子間力顕微鏡SPI-3800/SPA-300システムです。機能としては,
- 原子間力像測定(接触/非接触両対応)
- 摩擦力像測定
- 液中,雰囲気制御下測定
- 走査トンネル電子顕微鏡像測定
- 導電性カンチレバーによる原子間力/電流同時測定,表面加工
- ベクトルスキャンによる図形描画
などができます。走査用ピエゾは1μ,10μ,80μの3本があり用途に応じて使い分けます。
なお2015年度に,後継機種として日立ハイテクサイエンス社製AFM5000II一式を導入しました。旧装置は工学部・機能材料工学科・白井研究室に移設してあります。
ラマン分光装置 †
本装置は埼玉大学科学分析支援センターに設置されている装置ですが,私(上野)が管理者を分担で務めています。Renishaw社のInvia Reflexラマンマイクロスコープです。主に以下の機能が備わっています。
- 照射レーザー光:532 nm, 785 nm
- 検出器:高感度CCD
- Streamline高速ラマンイメージング測定
- Eclipse LWN Filterによる極低波数ラマンシフト測定(〜5 cm-1まで)
- 偏光ラマン測定
極低波数シフト測定により,層状物質単結晶数層膜のShearモード,Breathingモード測定が可能です。またフォトルミネッセンス測定もCCDの測定波長限界まで可能なので,層状物質の層数によるフォトルミネッセンス波長・強度変化も測定できます。Streamline測定は,層状物質試料の層数面内分布測定を非常に高速に行うことができます。というわけで,グラフェンやMoS2等の層状物質研究には非常に強力な装置です。
イメージングX線光電子分光装置 †
本装置は埼玉大学科学分析支援センターに設置されている装置ですが,私(上野)が管理者を分担で務めています。島津製作所:KratosのAXIS Nova光電子分光装置です。主に以下の機能が備わっています。
- 単色化AlKαX線源
- ディレイラインディテクター(DLD)システム
- パラレルイメージングと微小部スペクトル
- 全自動試料ハンドリング機構
- 試料ナビゲーションシステム
- 優れた中和機構による高エネルギー分解能
- アルゴンイオンクラスターエッチング銃
- 試料加熱冷却導入機構
アルゴンイオンクラスターエッチング銃は従来の単原子Arイオン銃とは異なり,クラスター化されたArイオンを用いてスパッタを行うため,原子層レベルでゆっくりと表面を削ることができます。そのため,有機化合物のような脆くて弱い物質の薄膜/結晶表面であっても,原子層レベルの分解能で深さ方向解析を行い,界面での組成/結合状態変化を調べることができます。層状物質を通常のアルゴン銃でスパッタすると,表面が荒れてしまって不活性なファンデルワールス表面とは違う物になってしまいますが,クラスターイオン銃ですとそのような欠陥の生成を抑制することができます。
層状物質バルク単結晶成長用3ゾーン管状炉 †
化学蒸気輸送法(CVT)により層状物質の単結晶を育成するための電気炉です。下半分の温調器が付いているところが温度制御部,上半分が3ゾーンのヒーター部です。1200℃まで加熱可能です。主熱電対破損による暴走を防止するため,各ゾーンに予備熱電対を設け,設定温度以上で電源が落ちるようにしてあります。そのため,各ゾーンごとに温調器が2台使われています。
CVTでは,高温部と低温部の間で温度勾配を与えて結晶を気相輸送成長するので,2ゾーン管状炉でもOKです。ところが高温部末端が管状炉出口に近いと温度が下がり,結晶が析出してしまうので,それを避けるために3ゾーンにして高温部末端まで温度を保っています。もう1式,ほぼ同じものがあります。
層状物質化学気相成長(CVD)用管状炉 †
加熱した石英管内に原料ガスを流し,基板上で堆積させて薄膜成長を行うための電気炉です。3セットあります。
手前の2段になっている管状炉はどちらも2ゾーンで,上流(左)側で原料を気化させ,下流(右)側で基板上に薄膜を成長させるため,温度を別々に制御するようになっています。奥側にあるもう1台は1ゾーン電気炉で,基本的には溶液塗布膜を何らかのガス中で加熱し,化合物薄膜を形成するために用いています。
どの管状炉も,外側に突き出た石英管の上流部にもラバーヒーターが巻いてあり,別の原料を気化できるようになっています。気化した原料を輸送するためのガスは,アルゴンと水素をマスフローコントローラあるいは手動流量計でそれぞれ制御して流しています。
グラフェンCVD/パリレン薄膜CVD用管状炉 †
上段がグラフェンCVD成長用の2ゾーン管状炉です。1ゾーンでも良いのですが他への流用も考えて2ゾーンになっています。石英管内に銅やニッケルなどの触媒基板を入れ真空排気して加熱し,メタン等の原料ガスを流して基板上で分解することでグラフェンを成長させます。水素ガスも流せるようになっています。
下段はパリレン(パラキシリレン)重合膜をCVD法により成膜するための1ゾーン管状炉です。突き出た石英管の管状炉外部(右側)には別にラバーヒーターが巻いてあり,そこで気化させたパリレンモノマーが高温の管状炉内で重合し,管状炉外部(左側)の石英管内に置いた基板上に堆積して成膜する,というものです。石英管は右側を密閉し,左側から真空排気しており,ガスは流していません。
参考資料:こちらのWebページにあるPDFファイル。
石英アンプル真空封入装置 †
石英アンプルに原料等を入れ,真空封入するための排気系と酸水素ガスバーナー一式です。石英アンプルを取り付ける部分が360度以上無限回転する「ロータリージョイント」となっているため,バーナーを動かさなくても石英アンプルを全方向から均等に加熱できます。
なお現在は排気ポンプはターボ分子ポンプでは無く,油拡散ポンプになっています。原料に添加する輸送剤のハロゲンで潤滑グリスがやられてしまいました。
高速昇降温ランプ加熱炉 †
赤外線ランプを用い,1分間で1000℃まで昇温可能な加熱炉(旧アルバック理工,現アドバンス理工製)です。乾燥酸素雰囲気下でのSi表面酸化,あるいは酸化グラファイトの瞬間加熱による単層剥離などの実験に用いています。
超純水製造装置 †
写真左にあるのがクリタ製のイオン交換樹脂塔,真ん中にあるのがミリポア製の超純水製造装置です。松野君ありがとう。水道水直結型 もあります。
半導体試験用微少電流測定装置/電圧源 及びLCZメータ †
層状物質・有機FETの特性測定に用います。Windows+ExcelVBAで測定プログラムを作りました。EasyGPIBはとても優れたソフトだと思います。微小電流測定と電圧源には米国Keithley社製の6517Aエレクトロメータと487ピコアンメータを使っています。
液晶モニタの下に置いてあるのは米国Protek社製のLCZメータです。日本ではまだあまり知られていない会社だと思いますが,面白そうな計測器をかなりの廉価で出しています。
これの他にもう1セット,Keithley6487ピコアンメーターを2台使用した測定系もあります。
ホール効果測定システム †
Keithley社製7001スイッチ,7065型ホール効果測定用マトリクスカード,6222電流ソース,2182Aナノボルトメーター,0.5 T永久磁石を用いたホール効果測定系です。測定ソフトはExcelVBAで自作しています。室温と77 K(液体窒素浸漬)で測定可能です。
極低温冷凍機 †
約5Kまで冷却することのできる機械式冷凍機(ダイキン工業製)です。極低温での電気伝導特性,光物性の測定に用います。2014年6月現在,上記の6517A+487-FET測定系を接続しています。
太陽電池分光感度測定装置 †
分光計器製YQ-250CX型です。現行ラインアップは分光計器HPにあり,外観はCEP-25BXII型などと似ていますが,15年以上前のものです。学内で廃棄処分寸前になっていたものを改修し,Windowsから制御できるようにしました。500Wの水冷キセノンランプと日本分光のCT-25C分光器で300nm〜1100nmの単色光を得て,試料に照射しながら太陽電池のI-V測定ができるようになっています。
I-V測定にはアドバンテスト(現サポートはエーディーシー)のTR6143型直流電圧・電流源/モニタを使っています。光量制御に必要なD/Aコンバータユニットが失われていたので,中古のGP-IB制御電圧源(横河電機7651型)も使っています。照射光は一定エネルギー(標準50μW/cm2)あるいは一定フォトン数に切り替え可能で,上記波長範囲内なら全く問題なく測定できています。しかし全部新品買ったらいくらするのでしょう・・・?
ソーラーシミュレーター(疑似太陽光発生装置) †
三永電機製作所のXES-151S型です。これとアドバンテスト(現サポートはエーディーシー)のTR6143型直流電圧・電流源/モニタを使って,太陽電池の光電変換効率を測定しています。
太陽電池評価ソフトは,いつもの通りEasy-GPIBを使ったExcelのマクロを自作しています。
スピンキャスト成膜装置 †
ミカサのスピンコーターの旧型です。有機半導体薄膜をスピンキャスト成膜する際に用います。
高速遠心分離機 †
KUBOTAのテーブルトップ高速冷却遠心機 3-30KS型です。酸化グラフェン水溶液の調製に用います。
(以下追って解説) †
- USB接続小型ファイバマルチチャネル分光器
- Xeランプ光源
- UVオゾン処理装置
- 酸素プラズマクリーナー
- 光電子収率測定装置
- ガスセンサー評価用パーミエーター
- 制御用パーソナルコンピュータ多数
GP-IB制御の装置が多いのでずっとPC9801とN88-BASICを使ってきましたが,98もついに販売終了と言うことでWindowsに乗り換えました。
LabViewやTestPointという測定制御ソフト構築用プログラミングキットを持っているのですが,どうもこの手のプログラミングに慣れていないので,ExcelのVisualBasicでGP-IBとRS-232C制御が出来るアクティブセルのEasyGPIB・EasyCommを使っています。基本的に,自分で回路設計して制作した装置,あるいは既製品を集めて自分で組み立てた装置が多いです。
EasyGPIBとEasyComm,公開が終了してしまいました。使用できないわけではないので,これからも使っていくつもりです。2014年6月に,電子分光測定系もすべてWindowsに乗り換えました。